日常生活において他者との対面コミュニケーションは重要であるが,苦手と感じる人々も一定数存在する.本研究では他者と話したいという外向的な気持ちを有している反面,相手に声をかける行為に不安を感じてしまう状態を消極性コミュニケーションと定義し,消極性コミュニケーションを支援するためのウェアラブルディスプレイを提案する. まず,カメラで一人称視点の映像を撮影し,リアルタイムに顔検出を行うことで,ユーザと向かい合う顔の数と継続時間を計測する.次に,これらのデータからユーザの交流状況を計算し,ディスプレイに表示する顔アイコンを変化させる.交流が少ない場合はオドオドした表情が,多い場合は笑顔の表情が提示される.さらに,交流した回数や継続時間を,アイコン周囲の円状のパターンの変化として表示する.このように自身の交流状況をさりげなく開示し,自身と周囲の人の双方に行動変容を促すことで,消極的な人の対面コミュニケーションを支援することを目指す.
発表
桃井 悠汰, 塚田 浩二. 消極性コミュニケーションを支援するウェアラブルディスプレイの試作. 情報処理学会研究報告, 2025-HCI-212(9), pp.1-8. 2025-3. [PDF]
桃井 悠汰, 塚田 浩二. 消極性コミュニケーションを支援するウェアラブルディスプレイの提案. 情報処理学会 インタラクション2025論文集, インタラクティブ発表, 2B44, pp.805-808. 2025-3. [PDF]
人々は他者との意思疎通を目的としない発話,いわゆる独り言を日常の中で発している.本研究ではこの発話を私的発話と呼ぶ.私的発話の中でも発話者が意識的に発するとされるセルフトークがスポーツ界において運動パフォーマンスを向上させる手段として注目されている.意識的な私的発話がある一方で,無意識的に発せられている私的発話も存在し,どちらも発話内容が記憶に残りにくいという特徴がある. 本研究は,これらの私的発話を,2 種類のマイク(単一指向性/全指向性)を用いて記録し,音声認識ライブラリを用いて文字起こしされたテキストデータと,音声データを発話者のライフログとして振り返ることができるシステムを提案する.本システムにより,発話時間や発話内容から,話者本人のその日の出来事を想起させたり,隠れたアイデアの発掘ができると考える.
私的発話識別の流れ.個人の発話と周辺音を含む発話を 2 種のマイクで記録し,音声認識ライブラリを用いて発話をテキストデータに変換し,認識文字数を比較する.
記録デバイスの構成(左)と,マイクの装着位置(右)
発表
友広 純々野, 塚田 浩二. 日常生活における私的発話識別法の提案. 情報処理学会研究報告, 2021-HCI-194(6), pp.1-6, 2021-08. [PDF]
人間は長年の生活の中で様々な生活習慣や癖が身につくが,健康に悪影響を及ぼしたり,悪い印象を与える悪癖や悪習慣も存在する.しかし,癖の多くは無意識に現れるので,本人が気づく事は難しい.そのため,癖の矯正には,第三者から癖の発生を指摘してもらうことが大切である.また,悪癖を改善するためには,悪癖の発生時にユーザがそれを認識し矯正すること,長期的にその悪癖を改善しようとするモチベーションを保つことが重要である. 本研究では立姿勢や着座姿勢という人間の姿勢の悪癖に焦点をあて,第三者の視線を考慮しつつ姿勢が乱れたその場を中心に悪癖の発生を通知するシステム「StandOuter」を提案する.また,リアルタイムで第三者への通知を行うフィードバック手法の効果について評価実験を行った結果,姿勢改善の意識付けを与える効果が期待できること,第三者から矯正の指摘を受けやすくなることが分かった.
VIDEO
発表
西田 樹, 塚田 浩二, StandOuter: 第三者の存在を考慮した姿勢改善手法の提案, 情報処理学会研究報告, vol.2018-HCI-177, No.17, pp.1 – 7, 2018. [PDF]
Tatsuki Nishida and Koji Tsukada, StandOuter: interactive outerwear for improving posture using self-conscious feelings, In Proceedings of the 2017 ACM International Joint Conference on Pervasive and Ubiquitous Computing and Proceedings of the 2017 ACM International Symposium on Wearable Computers (UbiComp ’17). pp. 273-276, Sep, 2017. [PDF]
西田 樹,沖 真帆,塚田 浩二, StandOuter: 第三者の視点を考慮した姿勢改善手法の提案, ソフトウェア科学会 WISS2016論文集, pp.305-306, 3-A21, Dec,2016. [PDF]
近年,新学習指導要項での中学校保健体育における必修化の影響もあり,ダンスに対する関心が高まりつつある.ダンスの形式には大きく分けて,事前に決めた振付や曲に合わせて踊るショーケースと,DJ がランダムに選んだ曲に合わせて即興で踊り腕を競うバトルがある.本研究では,後者のバトル形式に着目し,リアルタイムに演者の動きや審査員の反応を取得し,ダンスの演出を支援するウェアラブルデバイスを提案する.
システム構成図.ダンサーの動きを帽子に組み込んだ加速度センサで取得し,ダンスバトルの勝敗を判定するジャッジの心拍をスマートウォッチで取得する.この「ダンサーの動き」「ジャッジの反応」と,バトルの「残り時間」の3要素を,帽子に組み込んだLEDテープで視覚化し,観客も交えてダンスバトルをより盛り上げることを狙う.
帽子デバイスの表現の一例.ダンサーの動きの大小や,ジャッジの心拍の大小に応じて,帽子のLEDテープの光る色/強さ/パターンが変化する.
発表
小林 真弓,沖 真帆,塚田 浩二,ダンスバトルを盛り上げるウェアラブルデバイスの提案 ,インタラクション2017論文集,インタラクティブ発表,pp.460-463, 2-504-21, Mar, 2017.[PDF]
日常生活の中で何度も繰り返される行動は,無意識に行われることが多く,やり忘れが起こりやすい.さらに,実際には忘れていなくても,記憶が曖昧で不安に駆られることがある.例えば,外出する際に鍵を閉めたか,ガスの元栓は閉めたか,部屋の照明は消したか,などが心配になる場合がある.こうした状況では,現場に戻って確認すれば不安は解消されるが,現実的には困難であり,不安を抱えたまま1日を過ごすことも多い.そこで本研究では,ヒューマンエラーの一種であるAction Slipの脱落という種類のエラーに注目し,スマートウォッチやスマートフォン,RFIDを搭載した自作デバイスを活用することで,記憶の曖昧な行動を手軽に振り返ることができるシステム「SlipWatcher」を提案する.行動を記録し振り返る手段を提供することで,Action Slipへの気づきを促したり,現場に戻り行動の確認をする必要なく不安を取り除くことが期待される.
VIDEO
発表
蛯名真紀,沖真帆,塚田浩二.SlipWatcher: スマートウォッチを利用した行動確認装置.ソフトウェア科学会 WISS2016 論文集,pp. 291-292, 2016. [pdf]