3Dプリンターを用いたギアボックス造形支援システム

3Dプリンターの普及によって,個人でも利用可能なモデリングツールが多数登場しつつある.例えば,2Dスケッチやプリミティブな3Dモデルを組み合わせてモデルを生成できるツール(例:Autodesk社 Fusion 360)や,独自のプログラミング言語によってコードを記述してモデルを生成できるツール(例:OpenSCAD)等がある.こうしたツールに習熟することで,単純なケース等はもちろん,歯車やスライドといった機構部品を設計し,3Dプリンターで出力することができる.しかし,こうしたツールの習熟には時間と労力が必要である.特に,複数の機構部品を組み合わせて実用的な機構設計を行うことは,部品の噛み合わせや組み立てを考慮する必要があり,一層困難であった.

そこで本研究では,こうした機構の例としてギアボックスに着目し,ユーザーにとって分かりやすいパラメータ(例:ギア比,外径サイズ,固定方法等)を入力として,カスタマイズしたギアボックスを手軽に設計し,3Dプリンターで一体造形可能な支援システムを提案する.今回は,遊星ギアを対象とした3Dモデル作成システムをOpenJSCADをベースで作成し,出力・組立ができることを確認した.

本システムで作成した遊星ギアの作成例


発表

  • 中川 瑠星,新山 大翔,塚田 浩二,3Dプリンターを用いたギアボックス造形支援システム,インタラクション2020論文集,インタラクティブ発表,1B-39,pp.330-334, 2020-03-09. [PDF]

3Dプリンターにおける組立不要な一体造形手法の提案

3D プリンターを活用したモノづくりの中で,複数の部品が組み合わさって動く立体物を一回でプリントする「一体造形手法」が用いられることがある.これは,組立作業が不要なため,「時間/手間のコストを抑えながら試作検証ができる」,「入れ子構造のような複雑な形状を制作できる」等のメリットがある.しかし,造形を成功させるためには,部品間の隙間を適切に設けたり,サポート材を除去しやすい形状や出力設定を模索したりと,設計/出力時に配慮すべき点が多い.この試行錯誤には手間と時間を要するため,初心者には難しい手法であった.そこで本研究では,3D プリンターを用いた一体造形に適する機構設計を試みる.

発表

  • 新山 大翔,沖 真帆,塚田 浩二, 3Dプリンターによる一体造形式回転機構の提案, WISS2019論文集,登壇/デモ発表,pp.31-36,Sep,2019. [PDF]
  • 新山 大翔,沖 真帆,塚田 浩二,3Dプリンターにおける組立不要な一体造形手法の提案,インタラクション2019論文集,インタラクティブ発表(プレミアム発表),2B-25,pp.559-561,2019.【インタラクティブ発表賞 PC推薦[PDF]

3Dプリンタを用いた弾力調整可能なコイルスプリングジョイント機構の提案

本研究では,弾力を調整可能なコイルスプリングジョイントを提案する.径/全長/ピッチ等のパラメータをプログラム上で調整し 3D プリンタで出力することで,弾力や強度の異なるスプリングを作成するシステムを試作した.コイルスプリングを専用の連結ジョイントで繋ぐことにより,スプリングを辺とした立体構造物を作成できる.さらに,本機構の応用例の一つとして導電性フィラメントで出力したスプリングを使った押し込みセンサを試作した.

 
OpenSCADで実装したコイルスプリングの例.特徴として,接続用のネジ溝とサポート部の除去を助ける傾斜を備える.

 
左から,3Dプリンタで出力したコイルスプリング,専用ジョイントとの連結,立体構造物の例.

発表

  • 新山 大翔, 沖 真帆, 塚田 浩二,3Dプリンタを用いた弾力調整可能なコイルスプリングジョイント機構の試作と評価,情報処理学会研究報告, 2019-HCI-182(33), pp.1-8 (2019-03-11). [PDF]
  • 新山 大翔,沖 真帆,塚田 浩二,3Dプリンタを用いた弾力調整可能なコイルスプリングジョイント機構の提案,インタラクション2018論文集,インタラクティブ発表(プレミアム発表),3A14,pp.913-916,2018.[PDF]

ファブ時代に適した新たなジョイント機構の提案

従来のジョイントは,金型を用いて工場で製作される高精度なワンオフの接合方法(例:嵌め合わせ)が市販製品では多く見られる一方,個人レベルでは,接着剤などを用いて,外観や構造を気にせずに「とりあえずくっつけばよい」という刹那的な固定方法が一般的であった.このため,個人の作るプロトタイプと市販製品では,その外観や強度等に大きな差が出ていた.一方,近年の低価格な3D プリンターの普及に伴い,個人レベルでも3D モデルを設計/出力してワンオフのジョイントを出力できる環境が整いつつある.しかしながら,3D プリンターの特性を考慮しつつ,実用的なジョイントを設計することは一般の利用者には難しい.そこで本研究では,3D プリンターの利用を前提として,様々な部品や日用品同士を固定/調整可能なジョイント機構を設計,及びジョイントの調整が可能なシステムの構築を行い,ファブ時代の構造設計の効率化を目指す.

マルチクリップ3枚
作成したジョイント例

対外発表

  • 新山 大翔, 沖 真帆, 塚田 浩二, 3Dプリンターの特性に配慮した汎用ジョイント機構の提案, エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2016論文集, pp.252-258, Nov, 2016. [PDF]
  • 新山 大翔,沖 真帆,塚田 浩二, ファブ時代に適した新たなジョイント機構の提案, ソフトウェア科学会 WISS2015論文集, pp.169-170, 2-R16, Dec,2015. [PDF]

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