本研究では,安価な熱溶解積層方式の 3D プリンタで造形可能な細かい毛の集合体(毛構造)を活用した毛構造の拡張について提案する.予備段階として,毛構造の密度や長さ等のパラメータを変更することで,先行研究の再現性を調査した.このパラメータ調査の結果を用いて,毛を使ったセンシングやアクチュエーションを行うために,導電性/磁性等を備えるフィラメントを造形に用いる方式や,柔軟に動かせるソフトレジンに毛を埋め込む方式の試作・提案をする.これらの方式によって特性が変化した毛構造を用いて触覚提示を行うための例についても紹介する.
左から,導電性フィラメントで造形した毛構造,磁鉄PLA フィラメントで造形した毛構造と磁石,ソフトレジンを土台に用いた毛構造の例.
発表
鎌田 航誠,高橋 治輝,塚田 浩二. 導電性樹脂・磁鉄樹脂を用いた毛構造の3Dプリントと応用. インタラクション2023論文集, インタラクティブ発表(プレミアム発表), 2B-50, pp.681-685. 2023-3. 【インタラクティブ発表賞(PC推薦)】 [PDF]
本研究では,熱溶解積層方式 3D プリンタを G-code で直接制御することで,封蝋表現を実現する手法を提案する.具体的には,ノズルの温度をフィラメントの適正温度よりも高温に設定し,一箇所に多量のフィラメントを押し出す.次に,手動または自動で型をフィラメントへ押し込むことで,樹脂を封蝋のように固定する.
作例と制作手順
発表
本研究では,複数台の小型ロボットとテクスチャを組み合わせた情報提示手法を提案する.交換可能なテクスチャを備えた小型ロボットを物理的に駆動し,形状/動き等を変化させることで,ユーザに対して触覚的/視覚的な情報提示を行う.
小型キューブ型ロボット toio を使用して実装を行った.利用例の一つを右図に示す.あらかじめ決められた時間になると小型ロボットがユーザの腕に向かって移動し,最初はなだらかなテクスチャで,徐々に鋭く刺激の強いテクスチャで刺激を与える.
発表
家山 剣, 塚田 浩二. 小型ロボットとテクスチャを組み合わせた情報提示手法の提案. WISS2022予稿集, デモ発表, 2-B16. 2022-12. [PDF]
低価格帯3Dプリンタの普及により,個人レベルでも様々な機構部品を設計/出力することが可能になった.しかし,一般に部品設計には専門的なアプリケーションを使いこなす必要があり,習得には多大な時間と労力が掛かる.本研究では,先行研究として提案した「可変抵抗に操作感を付与する外骨格機構 」に焦点を当てた,インタラクティブな機構モデリング支援ツールを作成する.
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作成した支援ツール(スライダー型可変抵抗バージョン).先行研究では,3Dモデルを作成するためにスクリプト言語(OpenSCAD)で記述する必要があった.本ツールは触覚パーツのパラメータ(位置や数,種類等)をGUIで入力するため,手軽に設計できる.
発表
山本 侑吾,塚田 浩二.可変抵抗に操作感を付与するためのインタラクティブな機構モデリング支援ツール.インタラクション2022論文集,インタラクティブ発表,1D-07,pp.160-163,2022-02-28.[PDF]
3Dプリンタで造形可能な物理的な機構のみを利用して,可変抵抗(スライダー型/ダイヤル型)に触覚的なフィードバックを与える手法を提案する.一般的な可変抵抗に容易に脱着できる,クリック感と重みを個別に設計できる,低価格なFDM式3Dプリンターで手軽に造形できる,視覚的手掛かりの有無を切り替えて造形できる,等の特徴を持つ.外骨格機構として,スライダー型とダイヤル型の2種類の可変抵抗を対象に実装した.
コンセプト図と構成パーツ例.市販の可変抵抗器(スライダー/ボリューム)に,3Dプリントした軸受けとカバーを取り付けることで,クリック感や重みを付与する.
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サンプルデータ
発表
塚田 浩二,新山 大翔,沖 真帆.可変抵抗にクリック感と重みを付与する外骨格機構の提案.インタラクション2021論文集,インタラクティブ発表(プレミアム発表),1B02,pp.193-197,2021-03.[PDF]
3Dプリンターの普及によって,個人でも利用可能なモデリングツールが多数登場しつつある.例えば,2Dスケッチやプリミティブな3Dモデルを組み合わせてモデルを生成できるツール(例:Autodesk社 Fusion 360)や,独自のプログラミング言語によってコードを記述してモデルを生成できるツール(例:OpenSCAD)等がある.こうしたツールに習熟することで,単純なケース等はもちろん,歯車やスライドといった機構部品を設計し,3Dプリンターで出力することができる.しかし,こうしたツールの習熟には時間と労力が必要である.特に,複数の機構部品を組み合わせて実用的な機構設計を行うことは,部品の噛み合わせや組み立てを考慮する必要があり,一層困難であった.
そこで本研究では,こうした機構の例としてギアボックスに着目し,ユーザーにとって分かりやすいパラメータ(例:ギア比,外径サイズ,固定方法等)を入力として,カスタマイズしたギアボックスを手軽に設計し,3Dプリンターで一体造形可能な支援システムを提案する.今回は,遊星ギアを対象とした3Dモデル作成システムをOpenJSCADをベースで作成し,出力・組立ができることを確認した.
VIDEO VIDEO
発表
中川 瑠星,新山 大翔,塚田 浩二,3Dプリンターを用いたギアボックス造形支援システム,インタラクション2020論文集,インタラクティブ発表,1B-39,pp.330-334, 2020-03-09. [PDF]
3D プリンターを活用したモノづくりの中で,複数の部品が組み合わさって動く立体物を一回でプリントする「一体造形手法」が用いられることがある.これは,組立作業が不要なため,「時間/手間のコストを抑えながら試作検証ができる」,「入れ子構造のような複雑な形状を制作できる」等のメリットがある.しかし,造形を成功させるためには,部品間の隙間を適切に設けたり,サポート材を除去しやすい形状や出力設定を模索したりと,設計/出力時に配慮すべき点が多い.この試行錯誤には手間と時間を要するため,初心者には難しい手法であった.そこで本研究では,3D プリンターを用いた一体造形に適する機構設計を試みる.
発表
新山 大翔,沖 真帆,塚田 浩二, 3Dプリンターによる一体造形式回転機構の提案, WISS2019論文集,登壇/デモ発表,pp.31-36,Sep,2019. [PDF] 新山 大翔,沖 真帆,塚田 浩二,3Dプリンターにおける組立不要な一体造形手法の提案,インタラクション2019論文集,インタラクティブ発表(プレミアム発表),2B-25,pp.559-561,2019.【インタラクティブ発表賞 PC推薦 】[PDF]
本研究では,弾力を調整可能なコイルスプリングジョイントを提案する.径/全長/ピッチ等のパラメータをプログラム上で調整し 3D プリンタで出力することで,弾力や強度の異なるスプリングを作成するシステムを試作した.コイルスプリングを専用の連結ジョイントで繋ぐことにより,スプリングを辺とした立体構造物を作成できる.さらに,本機構の応用例の一つとして導電性フィラメントで出力したスプリングを使った押し込みセンサを試作した.
OpenSCADで実装したコイルスプリングの例.特徴として,接続用のネジ溝とサポート部の除去を助ける傾斜を備える.
左から,3Dプリンタで出力したコイルスプリング,専用ジョイントとの連結,立体構造物の例.
発表
新山 大翔, 沖 真帆, 塚田 浩二,3Dプリンタを用いた弾力調整可能なコイルスプリングジョイント機構の試作と評価,研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), 2019-HCI-182(33), pp.1-8 (2019-03-11). [PDF] 新山 大翔,沖 真帆,塚田 浩二,3Dプリンタを用いた弾力調整可能なコイルスプリングジョイント機構の提案,インタラクション2018論文集,インタラクティブ発表(プレミアム発表),3A14,pp.913-916,2018.[PDF]
従来のジョイントは,金型を用いて工場で製作される高精度なワンオフの接合方法(例:嵌め合わせ)が市販製品では多く見られる一方,個人レベルでは,接着剤などを用いて,外観や構造を気にせずに「とりあえずくっつけばよい」という刹那的な固定方法が一般的であった.このため,個人の作るプロトタイプと市販製品では,その外観や強度等に大きな差が出ていた.一方,近年の低価格な3D プリンターの普及に伴い,個人レベルでも3D モデルを設計/出力してワンオフのジョイントを出力できる環境が整いつつある.しかしながら,3D プリンターの特性を考慮しつつ,実用的なジョイントを設計することは一般の利用者には難しい.そこで本研究では,3D プリンターの利用を前提として,様々な部品や日用品同士を固定/調整可能なジョイント機構を設計,及びジョイントの調整が可能なシステムの構築を行い,ファブ時代の構造設計の効率化を目指す.
作成したジョイント例
対外発表
新山 大翔, 沖 真帆, 塚田 浩二, 3Dプリンターの特性に配慮した汎用ジョイント機構の提案, エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2016論文集, pp.252-258, Nov, 2016. [PDF] 新山 大翔,沖 真帆,塚田 浩二, ファブ時代に適した新たなジョイント機構の提案, ソフトウェア科学会 WISS2015論文集, pp.169-170, 2-R16, Dec,2015. [PDF]