本研究では,粘菌をデジタルファブリケーションの系に組み込むための自動培養システムを提案する.粘菌は環境や刺激に応じて,広がり方が異なる特性を持ち,HCI 研究や芸術表現にとって可能性のあるマテリアルである.一方,粘菌の培養を日常生活環境で行うことは難しい.湿度や温度を一定に保ったり,餌を適度に与えるだけでなく,培地を定期的に交換する必要がある.そこで,本提案では粘菌の自動培養装置「SlimeMolder」を開発し,多彩なインタラクションや表現分野で活用可能な,粘菌ファブリケーション基盤を構築する.
発表・採択
組紐は,柔軟性と強度を併せ持つため,固定や装飾等の多様な用途に利用できる.さらに,材料となる紐を変えることで,外観も美しくデザインできる.本研究では,導電糸と紐の組み方をカスタマイズすることで,異なる特性を持った導電組紐を製作する.さらに,製作した導電組紐の引っ張りや結んだ際の電気的な特性を測定し,その性能を調査する.これらの実験結果に基づき,導電組紐を活用したタンジブル・インタフェースの基礎検討を行う.
発表
- 穂積 佳, 塚田 浩二, 吉田 博則. 導電糸を活用した組紐型タンジブル・インタフェースの基礎検討. 情報処理学会研究報告, 2024-HCI-208(24), pp.1-7. 2024-6. [PDF]
本研究では、青空や夕焼けを生むレイリー散乱という現象に着目し、身近な素材を用いてレイリー散乱を再現するディスプレイ「RayLeight」を提案する。(1) レイリー散乱現象を引き起こす素材を、取り回しが容易で配置の自由度が高い形に加工(部品化)し、(2) 光源と組み合わせたディスプレイを設計すること、をコンセプトとして、二つのデバイスを開発した。
アクリルエマルジョンを用いたマトリクスディスプレイ
アクリルエマルジョン(市販のフローリングワックス)を溶かした溶液を封入したセルをマトリクス状に配置し、底面から白色LEDを照射することで、任意の部品の色を変化させるディスプレイを試作した。
ホットボンドスティックを用いたタンジブルディスプレイ
市販のホットボンドの樹脂スティック(以下、スティック)に白色 LED を投射することで、レイリー散乱が発生することに着目した。スティックは身近な素材で入手が容易であり、柔らかくしならせることができる特徴がある。こうしたスティックの特徴を活かした、カスタマイズ可能なタンジブルディスプレイを開発した。
発表
- 袴田 結女, 沖 真帆, 塚田 浩二. RayLeight: レイリー散乱を用いた柔軟なタンジブルディスプレイの試作と評価. 情報処理学会研究報告, 2024-HCI-207(14), pp.1-8. 2024-3. [PDF]
- 袴田 結女, 沖 真帆, 塚田 浩二. RayLeight:レイリー散乱を用いた柔軟なタンジブルディスプレイの試作. インタラクション2024論文集, インタラクティブ発表(プレミアム発表), 3C-69, pp.1354-1359. 2024-3. [PDF]
- 袴田 結女, 沖 真帆, 塚田 浩二. RayLeight : レイリー散乱を用いた立体ディスプレイの試作. WISS2022予稿集, デモ発表, 3-A08. 2022-12. [PDF]
- 袴田 結女,沖 真帆,塚田 浩二.RayLeight: レイリー散乱を用いたマトリクスディスプレイの提案.情報処理学会研究報告,2022-EC-63(12),pp.1-7.2022-03-11.[PDF]
磁性流体とは,強磁性の粉末を分散させたコロイド溶液である.強力な磁石等に近づけることで,スパイク状に隆起する.このスパイク状の隆起はメディアアート等で広く活用されている.我々は,こうしたスパイク状の隆起は独特の美しさを持つが,日常生活には馴染みにくいと考えた.そこで本研究では,磁性流体にオイルを混合させることで,棘のようなテクスチャを抑制し,なだらかな波紋表現を表現する.本稿では,スパイク表現となだらかな波紋表現を組み合わせたアンビエントディスプレイ「RippleSpike」を提案・試作し,表現事例や応用例を示す.
発表
- 野間 直生, 塚田 浩二. RippleSpike: スパイク表現と波紋表現を組み合わせたアンビエントディスプレイの試作と評価. 情報処理学会研究報告, 2024-HCI-207(13), pp.1-8. 2024-3. [PDF]
- 野間 直生, 塚田 浩二. RippleSpike: スパイク表現と波紋表現を組み合わせたアンビエントディスプレイ. インタラクション2024論文集, インタラクティブ発表, 1B-58, pp.433-438. 2024-3. [PDF]
- 野間 直生, 塚田 浩二. 磁性流体を用いたさりげない波紋表現手法の提案. WISS2022予稿集, 3-B12. 2022-12. [PDF]
カスタマイズ可能なラインストーン造形手法を提案する.本手法では,UV プリンタを用いてカラーインクで底面パターンを印刷し,その上に透明インクを盛り上げてストーンを印刷することで,ラインストーンを造形する.底面パターンや配色,印刷素材等をカスタマイズすることでラインストーンの外観をデザインすることができる.さらにレイアウトしたラインストーンは UV プリンタで一度にまとめて印刷することが可能である.
謝辞
本研究を進めるにあたり,FabLabSENDAI – FLAT にご協力いただきました.ありがとうございました.
発表・採択等